もうだめかもしれない。

大丈夫ですかと聞かれたら、はい大丈夫ですと言うタイプの人間です。

doto-ru

僕はドトールが好きです。

 

 

平日も外出して会社へ帰る前にちょっとお茶して行ったり、場合によっては朝早めに家を出て会社の近くのドトールでモーニングを食べることもあります。

そういう場合「ちょっと早めに行ってやらないと行けない仕事があって」みたいな言っても言わなくてもいい嘘を妻に言って家を出ます。

そうした背徳感を抱えながら口にするブレンドの味は、普段のブレンドよりも若干の苦みを含むとか、含まないとか。

 

ドトールというのはファミレス的な安心感と言いますか、そういった「虐げられた者たちの心の拠り所」みたいなものを持っておりまして、僕でもそこそこ慣れている感を出して入って行くことが出来るのですが、昨今の皆さんにとってはスタンダード中のスタンダードであるスターバックスやその他いわゆるちょっとオシャレなシアトル系カフェみたいなところ、もしくはイケてる若めのマスターがオープンしました風の個人経営カフェには、まあ一人で入るのが苦手です。

 

「いくらなんでもスタバは入れるでしょ」とイケイケな方は言うかもしれませんが、スタバの店員さん(大抵かわいいですよね)に対して、メニュー表を見た挙げ句、結局冒険出来ずに

「ラテのトール」

馬鹿の一つ覚えみたいにしか言えない自分の声を聞くたびに、「無理してる!」ということを痛感しないわけにいかないのです。

(ちなみに夏場ならこれが「抹茶クリームフラペチーノのトール」へ変わります)

 

そんな重度のスタコン(スターバックスコンプレックス)を抱える僕としては、そこそこの清潔さと心地よさを演出しながらも来る者を拒まない佇まいのドトールは非常にありがたいわけです。店員さんもどことなく素朴であり、柔和な印象の方が多いです。

一度カウンターでアイスコーヒーを受け取った直後にそのままコップを倒して中身を全てカウンター上にぶちまけてしまったときももう一杯何と無料でくれたことがありました。

そのときは店員さんのマニュアルには決してないであろう対応に感謝しつつも、コップを倒した直後に自分が発した「ああっ!!」という声があり得ないほどデカくて店内に響き渡っていたことに動揺し、お礼もそこそこに二階席へと駆け上ってしまいましたが。

 

 来るものを拒まない姿勢が魅力のドトールには様々な人間たちが集います。

私は大体文庫本などを持ち込んでブレンドかアイスコーヒーを友に至福のひとときを過ごす訳ですが、このお店では実にいろいろな人間模様が繰り広げられるのです。

 

まず、勧誘。

これは多い。保険の話をしてる人がとても多く、スーツの方が多分保険会社の人で、私服のふとが紹介された人、というかんじです。

ときどきどう聞いても怪しげなビジネスの話をされてる方もいて、以前オラオラ系のスーツ男がイケイケ風のちゃらい兄ちゃんに話を持ちかけていて、まあこれなら相性ばっちりだなと思ったことがあります。

結構長いことやってる人が多いのですが、いつもどうなったのかわからずにこちらが先に席を立ってしまうのでやきもきしています。

 

次に初老の夫婦。

ドトールは年配の方でも入りやすいせいか、店内の平均年齢が非常に高い。私が見積もったところ、ざっと67.3歳くらいです。

そして、初老の夫婦というのは若いカップルなんかと違って無駄な言葉を必要としません。大抵のことは空気感で伝わってしまうからです。

喋るときは、低く、小さい声でお互い顔を近づけてぼそぼそ喋る訳です。

先日も隣の席にいた夫婦は

夫「…映画」

妻「…うん」

夫「次の」

妻「ああ」

夫「…」

妻「時間」

夫「…大丈夫」

という会話のまま席を立って行きました。

まるで連想ゲームのようでした。夫婦というのは時を経るとここまで研ぎすまされたソリッドな会話が出来るのだと我が身を振り返るいい機会となりました。

 

そしてなにより、ドトールと言えばおじさん、これにつきます。

ドトールとは、おじさんを見に行く場所なのです。

 

一人で来て、新聞を読んでいるおじさん。

大抵野球帽をかぶり、ジャンパーというのに相応しい上着を着ています。

二人連れの仲良しそうなおじさんもよく見ます。

中学生か、というくらい楽しそうにおしゃべりしているので、見ている方も楽しくなります。

あと、あまりに居心地がいいせいか、腕組みしたまま寝ているおじさんもよく見ます。

正直早く出てけよと思いますが、そっとしておいてあげてください。

 

決してスターバックスでは見れない地に足の着きまくった人間模様が見たい方は、今すぐお住まいの街のドトールへお急ぎください。見慣れたはずのドトールが、異空間のように見えて来るはずですよ。