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もうだめかもしれない。

大丈夫ですかと聞かれたら、はい大丈夫ですと言うタイプの人間です。

hitorigoto

きっかけは妻でした。


「誰と電話してたの?」

急にそんなことを言い出したのです。

「いや、電話なんてしてないけど」

「うそ。だってなんか喋ってたじゃん」

なんのことか全くわかりません。

首を傾げながらも寝室へ戻る妻。

僕はリビングでテレビを見ながらビールを飲んでいただけです。

 

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時刻は既に零時を回っています。

このような時間帯に電話をすることなど、よっぽどの非常事態以外ないと言っていいでしょう。

妻はなぜ僕が電話をしていたと思ったのか。

それは僕の声が聞こえたからだというのです。

もちろん僕は声を出した覚えはありません。 

そのとき、一つの可能性に気がつきました。

 

僕はもしかしたらひとりで喋っていたのではないか?と。

 

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たまたま大きめの声で出てしまった独り言が、妻にはまるで電話で喋っているように聞こえてしまったのではないか?

可能性が無いとは言えません。


そして僕は考えたのです。

自分の独り言を記録してみてはどうだろうか、と。

自分自身にも記憶がない、そんなとき果たして自分はどんな言葉を喋っているか。
それを知ることで僕自身が持っている自分の知らない一面を知ることも出来るのではないかー

そのとき僕は、軽く考えていたのです。
自分自身の独り言を記録することなど、造作もないことだろうとー



「独り言を記録する試み」

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 僕は一体いつ独り言を言っているのか。

そこで、僕は自分が一人になる環境、すなわち洗面所や浴室、トイレなど、あらゆる場所でビデオを回せる環境を整えました。

 

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独り言はどこで顔を出すかわからないのですから。

〜DAY1〜

朝起床すると同時に僕は眠い目をこすりながらビデオカメラの電源を入れました。

まずは記録することが大事なのです。

顔を洗い、歯を磨き、髭を剃る。

嫌気が差すほどに単純かつつまらない作業です。

無心なまま作業を終え、録画ボタンを止めます。

こんなことをすることに早くも疑問を持ちつつ、それでも日常は否応無く僕を急き立てていきます。

妻とこどもたちにいってきます、と声をかけて外に出ました。冬の風は冷たく僕に現実を突きつけてきます。

僕は他の人々と同じように肩をすくめ、人生に諦めたような表情を作って駅へと歩きはじめました。


〜DAY2〜

 

前日深酒をした僕は風呂に入り損ねたため、朝シャワーを浴びることにしました。

前夜の酒が残る重い頭を引きづりつつ、それでも何かに導かれるようにビデオカメラのスイッチを入れます。


何が映っているのかそんなことすら気にすることもなく、ただただ記録を続けました。

僕の毎日は、それほど自分自身に興味を持つことにすっかり疎くなっていたのかもしれません。

 

〜DAY3〜

ビデオカメラで記録した動画の撮影時間はそこそこの長さになっているようでした。

あまり撮りすぎても後で見返すのが大変です。

面倒だけど、ここで一度見返すことにしよう。

そう思ってずっと撮影モードだったカメラを再生モードにし、初日からの様子をチェックすることにしました。

 


独り言を記録する試み1 - YouTube



驚きました。


自分は一人でいるときにこれだけ喋っているのか、と。


僕は、何か自分でも認知出来ていない大きな悩み事を抱えてしまっているのでしょうか。

もちろんそれなりの悩みはあります。それは仕事しかり家庭しかり。

しかし、誰もが経験するような人並みのものだと自分自身は思っていたのです。

いくつかのフレーズが出ているようですが、多いのは「同意」でしょうか。

おそらく声が出たときに何か考えていることがあり、僕の場合はその思考に対してのレスポンスが声に出てしまうようなのです。


僕はこんなことをずっと続けてきたのか?
そんな思いに捉われながらもう少し記録を続けることにしました。


〜DAY4〜

記録を続けるうちに独り言にはいくつかのパターンがあることがわかってきました。

 


独り言を記録する試み2 - YouTube

 


最初に気がついたのは「同意」でしたが、それ以外にもこんな傾向があったのです。

・攻撃的フレーズ(誰かへの罵倒、威嚇するような声)
仕事なのか、その日にあった出来事に対しての感情が怒りの方向に向かった際に出てくるのがこの「攻撃的フレーズ」です。
言葉にならない言葉のようなもの(映像からは聞き取れない)も多く、最も感情的に出ている言葉だと思われます。

・謝罪
「すみませんでした」
「申し訳ありません」
「俺が悪いんでしょ」
などのフレーズがメインのようです。

面白いことに、前述の「攻撃的フレーズ」が出たあとに続けてこれらのワードが出てくることが多く、「怒ったあとに謝る」ことを僕は独り言の中で行っているようなのです。

・ヤバイ
これだけで一つの括りにしてしまうのもどうかと思うのですが、この単語は他の感情とも一緒に出来ないくらい、単独での出現回数が多いのです。もっともらしい言葉にするのであれば、「危機感」といったところでしょうか。
ただひたすらに「ヤバイ」「あー、ヤバイ」「ヤバイヤバイ!」と繰り返しています。

しばらくすると「間に合わない」という言葉が出てきます。
何がしか期限や、猶予のあるものに対しての危機感がこの感情に繋がっているようです。
確かに仕事上納期のある案件もいくつか抱えているのも事実です。
そうした部分が僕のこの独り言に繋がっているのでしょうか?

〜DAY5〜

記録をいつものように行い、洗面所から出ると、妻が「怒ってる?」
と少し僕の顔色を伺うように聞いてきました。

「いや、別に…」そう答えてから右手に持ったビデオカメラに視線が行き当たりました。

 

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「攻撃的フレーズ」がきっと強く出ていたのでしょう。

妻にその声が聞こえていたのです。


「独り言だよ。君のことを言ってるわけじゃない。なんて言うか…何についての怒りなんだか、僕自身もよくわかってないんだ」


そういうと僕はそそくさと妻の横を通り抜け、寝室へと向かいました。


心なしか、妻の表情は怯えているように見えたのは気のせいだと信じて。


〜DAY6〜


次第に記録される独り言に、従来とは違う内容が出てくるようになりました。

 

 


独り言を記録する試み3 - YouTube


これらの単語は一体何の意味を持っているのか。
僕にもわからないものが増えてきたのです。
思い当たる節のない単語ばかり。

過去に何かで見たり聞いたりした単語が時々何かのタイミングで口をついて出る、ということはあったかもしれませんが、そういうわけでもなさそうです。

この頃になると自分を記録しているということもすっかり馴染んできたのか、初期には「記録している」という意識からなかなか普段のように記録出来なかったことが嘘のように色々な言葉が出てきているようでした。

しかし、一向に僕は自分が独り言で何を喋っているか、ビデオカメラを見返すまで覚えていないのです。

独り言の記録がスムーズに行くようになったことに反比例するように、僕は体調を崩しはじめていました。

気分が優れず、頭痛と吐き気、そして腹痛を覚えるようになりました。
妻には何度か「そんなに辛いなら休んだら?」と言われましたが、仕事は待ってくれません。
「そんなに簡単に休めるわけだろ」と吐き捨てて、僕は会社へと向かう日々が続きました。

〜DAY7〜

朝起きると枕元にビデオカメラが転がっていました。

 

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寝室にカメラを持ち込んだ覚えはありません。

なぜこんなところに?

さらに、寝汗をびっしょりとかいています。

体の節々には痛みも鋭い痛みも感じます。

一体、昨夜何があったというのでしょうか。

気になった僕は録画された映像を見返して見ました。


独り言を記録する試み4 - YouTube


僕は思わず「うわっ」と声を出しました。

一体これは何なのか。

なぜ僕はひょっとこのお面をつけて奇妙な踊りをしているのか。

 

混乱した頭で考えます。しかし、答えは全く思いつきません。

頭の片隅で独り言の記録のことがちらつきます

もしかして…

これも独り言の影響なのか?

 

寝室から出ると、ひょっとこのお面が廊下に落ちていました。

まるで、こちらをじっと見つめるかのように。

 

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〜DAY8〜


「独り言 」
で検索してみました。

 

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「独り言は精神的に不安定なときほど症状が出やすいといわれています」

「意味不明なものであったり、人がいるのに言い続ける独り言は病気の可能性があります」

 

検索結果を見る限り、やはり独り言を多く言う人はストレスを溜め込んでいる傾向が強いようです。

即座に思い当たる節は無くても、僕自身がそれほどのストレスに感じていないとしても、体は反応しているに違いありません。

とにかく、無意識にあのような行動を取っていた以上、少し本気でこの独り言の改善に取り組まなくては、次に自分が何をするかわかりません。

 

そこで僕は思い立ちました。

子供が産まれてからというもの、趣味だったクルマも家族で出かけるとき意外はめっきり乗らなくなっています。

たまには一人で夜のドライブに出るのも、ストレス発散にはいいのではないか。

そう思ったのです。

僕はクルマのキーを掴むと、外に出ました。

 

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冬の、澄んだ空気が気持ちのよい夜でした。

 

 

 

僕は自分の中の澱のようなものが、この夜になくなるのではないか、そんな気持ちがしていたのです。

 

 

そのとき、ふと後ろに気配を感じました。

 

 

 

 

 


独り言を記録する試み5 - YouTube

 

 

 

 

そして今、僕はこの文章を書いています。

 

 

 

 

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あなたも、独り言、言っていませんか?