もうだめかもしれない。

大丈夫ですかと聞かれたら、はい大丈夫ですと言うタイプの人間です。

パパちゃん、かっこいい!

娘はゲラである。

よく笑う。乳児の頃は全く感情を表に出さなかったし、目が小さいのに黒目がちだったので
夫婦で「グレイ」と呼んでいたが、すっかり人間らしくなってほっとしている今日この頃である。

で、感情が表に出るようになったら今度はそれまでの反動なのかよく笑うようになった。

笑いすぎである。

よく年頃の女性のことを「箸が転がってもおかしい時期」とかいうことがあるが、
今の娘は転がるどころか「箸」という字を見ただだけで笑い出しそうである。


また日々語彙が増えている段階なので、1日1日、こちらが思いもよらないことを言ってくれる。

最近ハマっているのが「かっこいい」である。

いうと僕が喜ぶから必要以上に言っているのだろうが、おかしの袋を開けてあげては
「パパちゃん、すごーい!かっこいい!」
鍵を開けてあげては
「パパちゃんありがとう!かっこいい!」

まるで自分がスーパーマンになったような気分である。
世の中のお父さんたちはこの時に感覚を忘れられずに年を重ね、年頃の娘たちに嫌われていくのかと思うと私は胸が痛む。世の中は残酷だ。お父さんが不憫すぎる。

父親たちはこのころのほんの数年間、数ヶ月の思い出にすがってこの先何十年間も生きていくのだ。いや、そういう人ばかりじゃないだろうけど。
というか僕だけの話かもしれないけど。

とにかくそうやって娘にすごい、かっこいいと言われ続けて最近いい気になっている僕である。

この間一緒にテレビを見ていたら強盗が逮捕されたというニュースをやっていた。
監視カメラの映像がテレビに映ったら、なんとなく不穏な雰囲気は伝わったのか
「こわーい」
と娘が言ったので
「悪い人がおまわりさんに捕まったんだよ」
と言ったら
「おまわりさん、かっこいいー!」
脊髄反射的に言っていたので、ここ最近は無意識にかっこいいを言っているようである。botか。

よく笑ってくれるのも助かる。
おしりとちんちんで無限に笑ってくれる。
体の部位を言うだけでも大笑いなのである。
下ネタがらみが好きなのはまだしも、「おなか」でも笑うのだからこれはもう腹フェチなのかもしれない。
「パパちゃんのおなか」
と言ってひゃはーっ、と笑うのである。ふなっしー林家パー子かというほどのひゃはーっだった。文字に起こすならば間違いなくひゃはーっだった。

僕は正直なところそんなに笑うことを素直にできない人間である。妻もそんなにゲラゲラ笑うほどでない。
家族でゲラ、というと僕の姉が思い浮かぶ。とにかく笑いの沸点が低い人間である。なんでも笑うので場の空気を和ませたいときにはいてほしい人間だ。
親族の集まりの際にいてくれると気がラクになる。娘はそのあたりが遺伝しているのかもしれない。

妻のお父さんは娘のことを溺愛していたらしく、確かに今でもちゃん付けで妻のことを呼んでいる。娘、32歳である。
お父さんにとって娘はいつまでも2歳くらいの「パパ、かっこいい!」で止まっているのだ。きっと。
でも確かに今の娘と接していて思うのは
「こりゃあ、お父さんは一生娘のことはかわいくて仕方ないだろうな」
ということである。

娘が大きくなって、自分がジジイになって娘がいいかげんババアになっても娘は娘である。
永遠にかわいいのだ。