もうだめかもしれない。

大丈夫ですかと聞かれたら、はい大丈夫ですと言うタイプの人間です。

津村記久子が好きなだけ

津村記久子という作家がいる。

わざわざ書くまでもない有名で人気のある作家さんだと思うが、一応書くと
10年以上OLを続けながら小説を書き続け、芥川賞を受賞してからも普通に勤め人をしながら作家活動を続けていた人だ。
最近ようやく会社は辞めたようで、今は作家活動に専念されている。

僕は津村記久子さんが好きだ。

もう信仰みたいなものなので、新刊が出たら妄信的に全て買っている。
文庫になるのが待てないのでハードカバーで新刊で買っている。
つい最近も買ったばかりで、ここ最近の生きる喜びは彼女の新刊「浮遊霊ブラジル」を
通勤途中の電車の中で読むことであると宣言しておく。


小説自体もちろん素晴らしいのだけど、僕の拙い文章力で津村さんの作品に泥を塗るわけにはいかないので、今回は津村さんの外面的な部分について僕がいかに好きであるかを書きます。

なんというか、ここまでくるとちょっとした恋みたいなもので
僕は時々googleで「津村記久子」と打って検索し、画像検索で津村さんの顔を見ていたりする。

そうして
「この写真の津村さんはかっこいい」とか
「この写真、写り悪い」とか考える。
実際にお会いしたことはもちろんない。
ないが、なんとなくわかる、気がする。

書いている文章と表情が一致していると勝手に思っている。
僕が文章から受ける印象とその雰囲気が、画像の津村さんから伝わってくると勝手に思っている。
津村さん本人が読んだらお前に何がわかんねんと(津村さんは関西の方だ)思うだろうけど勝手に書かせて欲しい。

要は、すでに津村さんは僕の中で神格化されつつあり
アイドルを追っかけるファンの心理と思ってもらえればほぼ間違いない。

津村さんは書く小説書く小説しょっちゅういろんな賞を獲っているので、ここ最近の著者紹介とか、
雑誌で紹介される時のプロフィール欄が大変なことになっている。
書き出してみる。

2005年 「マンイーター」(のちに「君は永遠にそいつらより若い」と改題)第21回太宰治賞受賞
2008年 「ミュージック・ブレス・ユー!!」第30回野間文芸新人賞受賞 同年同作で咲くやこの賞文芸その他部門受賞
2009年 「ポトスライムの舟」 第140回芥川賞受賞
2011年 「ワーカーズダイジェスト」 第28回織田作之助賞受賞
2013年 「給水塔と亀」第39回川端康成文学賞受賞
2016年 「この世にたやすい仕事はない」芸術選奨新人賞受賞

実に7つもの賞を約10年で受賞しているのだ。
受賞歴があまりに多いので全ての受賞歴を書いてもらえないことだってある。

何と言っても賞の名前に文豪が入りすぎというところもポイントだ。
太宰治芥川龍之介織田作之助川端康成まで抑えているのである。
この文豪四人の名前を冠した賞を全て抑えている作家はそうそういないだろう。
淡々と一定のペースで出し続ける小説が相当な打率で賞を獲る、こうした部分もかっこいい。
憧れてしまう部分である。

そんな津村さんが最近「たべるのがおそい」という文芸誌に短編を寄稿していたので早速買い求めて、読んだ。

作品の中にはとある陸上選手を追っかける女性たちが描かれており、それはまるで津村さんの小説を求める自分の姿を見るようだった。

もちろん作品は期待していた通りいつもの津村さんで、僕はそれで十分だったのだけれど
「さすが津村さん」と思ったところがもう一つだけあった。

「執筆者」という巻末のページがあって、そこには作品を寄稿した作家のプロフィールやちょっとした一言などが書かれているのだけど、
他の作家の方がこれでもかと受賞歴を書き綴ったり、プチエッセイかな?というくらい饒舌にここ最近の自分の近況を書いたり、この書き方面白いでしょ?みたいなオモシロ文体で自らをアピールする中、
津村さんの欄には、これだけが書かれていた。

「1978年大阪府生まれ。元会社員の小説家。大阪府在住。新刊は、10月発売の「浮遊霊ブラジル」です」

数々の受賞歴などは一文字も登場しない。
自分が誰であるか。
必要最低限の情報のみをシンプルに伝えるパンチライン
履歴書もかくやという潔さ。

僕が津村さんを頼もしく感じるのは、こんな瞬間だ。

やはりこういう部分を目にするたびに僕はますます津村さんいいなあ、やっぱいいなあと勝手にどんどん思いを募らせていくし、これからも小説を買い続けていくので、ひとつこれからもお元気で小説を書き続けて欲しいと思うのです。津村さん、よろしくお願いします。