もうだめかもしれない。

大丈夫ですかと聞かれたら、はい大丈夫ですと言うタイプの人間です。

電話の切り方

電話の切り際が怖い。

会社で電話を使用している時、用件が済み、
「失礼いたします」
と電話を切る流れになった際に、ズバンッという感じで一目散に電話を切る人がいる。


耳を当てているこちらとしては
「ガチャンッ!!ツーツーツー…」
という音をいきなり大音量で耳元で聞かされるのでたまったものではない。

基本的にはビジネスマナーを守ってくれる人は多く、
少し間を空けてからゆっくり切る人が多い。

時として「え?直前までの話し方きちんとしてるのに、切り際それなの?」という感じに、唐突に本性を現してくる人もいる。

丁寧すぎるくらいの締めの挨拶の後、間髪入れずに切り出されるガチャ切り。
ガチャン、では済まずにバゴォンという感じで切ってくる。
電話の向こう側で、その人が受話器を思い切り叩きつけているのではないかと思えるほどの迫力だ。
こちらはその残響でめまいがするほどである。

実際、同僚でもそういう人が以前いて、電話の切り際は毎回逃げるように
「はいはいはいはい、はい〜」
と強引にはいを連呼し、そのままの勢いでバゴォンと受話器を叩きつけていた。
総務に確認したことはないが、おそらくその人の内線は他の人と比べると交換する頻度が異常に高かったのではないだろうか。

ともかく、それが嫌なので、私も自分の方が先に電話を切りたい、と思うようになった。
新人の頃は必ず相手が切るのを確認してから電話を切りましょうね、みたいなことを聞いてきちんと実行していた。かわいいやつだった。
そのために失礼します、と言った後にじっ、という感じで向こうが切るのを息を潜めて待っていたら、向こうもそのつもりだったのかなかなか切らずに、お互い息を殺したままの沈黙が続いてしまったというプチハプニングもあったが、今は昔の話である。

とはいえ、自分がされて嫌なことを人にやってはいけないよ、と幼い頃学んだ言葉の呪縛から逃れられない私は、ガチャ切りだけはすまいと心に決めている。
そこで私が実践しているのは、「受話器を置く白いところを先にスッと押す」である。
これ、やっているひとも多いと思うが、これをやってもらえると大きな音を出さずに通話を終了してもらえるので、非常に終わり際がよい。

そんなわけで私は通話の終わり際に
「失礼します」
の最初の「し」を言い始めるあたりで静かに受話器を持っていない方の手をその白い部分に持って行き
最後の「す」を言い終えると同時にスッとその白い部分を押している。まるでピアノの白鍵を押すように。
その時鳴るメロディはきっとミのシャープである。ピアノこと全然わかっていないけど。