もうだめかもしれない。

大丈夫ですかと聞かれたら、はい大丈夫ですと言うタイプの人間です。

会社のお土産

全国の会社員の皆様が抱える問題だと思うのだけど、
旅行なり、出張なりに行ったら自分の所属する部署の人のためのお土産を買うのが悩ましい。


そもそも、誰にまで配ったらいいのか、とか考えだすともうきりがない。
とりあえず部の人全員分買ってきゃいいか、なんて思ってお土産やさんに行くと
「あれ、うちの部って全部で何人いたっけ…」
となり、頭の中で一人、二人…と数えだし、微妙に間違いはあるといけないからと大目に買うはめになる。
そうなると結構な数になるのでたくさん入っているものを箱買いすることになるのだけど、お菓子の入っている数というのは、ものによっても違っており、例えば25人いる部署にいる場合に「これだ!」と思ったお菓子が24個入りだったりするときには「ムキーッ」となる。

お菓子もお菓子で一人に一つずつ配れるものがよいだろうと私は思っているので、個別包装になっているものを優先的に選んでいる。
時々大袋に入っているものを「どうぞー」と言いながら人に取らせて回っている猛者を見かけるが、ああいうのはそもそも他者との信頼関係が築ける人だからこそ許される行為なのだと信じている。私が人に袋を差し向けて暗い声で「どうぞ…1個取ってください…」と言って回っている光景というのは想像がつかない。サイコホラーである。お菓子以外の何かが袋に入っていそうだ。

なにより、お菓子を渡すタイミング、というのがもう本当に難しい。
私の場合、新入社員の頃、ほとんど仕事らしい仕事もしていないのに当時の上司に「休みなさい!」と一喝されて衝動的に休んでしまい、休んだあげくに買って帰ってきたお土産をどうやって渡したらいいのか考えあぐねた結果、ものすごい早い時間に出社して、全員のデスクの上に1個ずつ置いておく、というねずみ小僧のようなことをしていた。出社した先輩社員たちが「これなんだ?」とざわざわしているのにも気がつかないふりをしていたものである。もはやなんのために買ってきたのかさっぱりわからない。
とはいえ、私のように面と向かって一人一人にお土産を渡していくのが苦手な人間としては、個別包装になっているとその人がいないときにも置いておけばOK、という気楽さはある。

しかもお土産、というのは結婚式の披露宴で出される料理くらい配られた人の間では品評されがちだ。
へんてこなもの、マズイものを配ればたちどころに「え、あの人… 何このお土産?」となるのは目に見えている。
センスが問われるのだ。「おみやげセンス」もしくは「おみやげ偏差値」とでも言おうか。この偏差値を図る採点官がどこの会社にも必ずいるものである。この偏差値を上げる予備校の存在を私は今の所知らない。夏期講習くらいなら受けてもいいと思っているのだが。

もっと言うと、「そもそも部の人へのお土産って、いったい何?」というそもそも論も発生しがちである。
仕事を休んでプライベートできている旅行先で、なぜ会社の人へのお土産を買うのか。
公私共々仲良くしている、という間柄ならまだしも、基本的に会社の人へ買って帰るお土産というのは義理も義理、ギリギリのお土産である。
おまけに領収書だって切っていない。自腹100%である。
もっともっと言うと、出張でどこかに行ったときに買って帰る会社の人へのお土産というのはもう仕事でいって仕事の人へお土産を買っているわけで、もはや「なんのために生まれて 何をして喜ぶ…」とアンパンマンの一節も唱えたくなろうというものである。

ということを、夏休みが近づくといつも思う。
そして、続々と旅行から帰ってきては、ほんの数時間の間に席を外している間にたっぷりと私のデスクの上にお土産を置いていってくれる諸先輩方に罪悪感を感じつつ、自分が今年は何をお土産に買って帰ればいいかを思案し始めるのだ。