言っときゃよかった
言っときゃよかったと思うことが多い。
何か言われても即座に言い返せない。
後で思い返すと「結構ひどいこと言われたんじゃない?」と思うことがあるのだが、
言われた瞬間は私自身「ああ、そうだよね〜」みたいな感じで飲み込んでしまう。
それが悪いかどうかということよりも
「あのとききちんと言い返すべきだったのでは?」
とか「やっぱりおかしいんじゃないか?」とか思うことが多く
もやもやしたままずっと時間だけが過ぎる。
そういうことが溜まり溜まって風呂場で「あーっ!!!」と叫んでいる。
みんなどうやっているのだろうか。
そもそもあまり気にしていない、という人が私の想像よりも多くて社会と、社会で生きる人々のタフネスに未だに驚かされるし、
そのたびにつらくなる。
なぜみんな気にしない。
例えば職場で、傍から見ていて「うわ、ずいぶん強く言われてんなあ」と思って聞いてると
当の言われた本人は別に気にしていない風に、言われたことに対して返答していたりする。
「え、イラっとしないのかな?」
「傷つかないのかな」
と思うが、私の弱さから本人に聞いたことはない。
私だったらうつむいてそのまま黙り込んでいるところだ。
小さい頃から対話の訓練をきちんとしてこなかったせいだろうか。
家に篭って絵ばっかり描いていたからだろうか。
子供の頃、特撮モノが好きだった。
その中でも敵役で出てくる怪人が好きで、私は画用紙に怪人ばかり描いていた。
母親にねだって買ってもらった特撮ファンの大人向けの高価なムック本に「怪人図鑑」が載っていて、それが嬉しくて怪人を何体も模写した。
そのうち私は怪人を自分で考えて描くようになった。
「この怪人は妖怪と日用品が合体してできているな… よし、この怪人の所属している悪の組織は首領が妖怪にしよう」
みたいな悪の組織の設定も一緒に考えていた。
そういえば一時期ホラー漫画の立ち読みをすることにはまってしまった時期があって、よっぽど印象が強かったのか、
御茶漬海苔というペンネームのホラー漫画家の画風が脳裏にこびりついてしまい、自分でも血みどろの絵を描くようになった時期があった。
母は少し心配だったのか、僕が自分で描いて「ちょっと気持ち悪い絵描いちゃった」と子供ながらに母親に相談すると
「こういうのは本当によくない」
と言って私の描いた絵を近所のスーパーで野菜を詰めるのに使ったビニール袋にいれると、
「塩を振っといたほうがいい」
と言ってアジシオを振って口を縛り、捨ててしまった。以来私は血みどろの絵を描かなかった。
何の話だったか。
やはり、私は途中でどうでもよくなってしまう性格なのかもしれない。