もうだめかもしれない。

大丈夫ですかと聞かれたら、はい大丈夫ですと言うタイプの人間です。

猫事情

近所に猫が多い。

子供と散歩に行く時に、面倒臭がったり、あまり行きたくなさそうな場合
「ねこちゃん探しに行こう〜」と言うと「え!?ねこちゃん!?行く行く!!」となってチョロい。
子供に猫は大人気。
というか世間的に今や猫は大人気なのだが、猫はかわいい、かわいいは正義、よって猫は正義という理論である。


家の周りを数分歩くだけでも猫スポットがたくさんあるので非常に楽しい。
まずマンションの駐車場。
ここにも何匹か定住している猫たちがいるので、運がいいとここから早速猫に出会うことができる。

ここにいる猫は移り変わりが早いのか、よく見かける割にはいつも見かける猫が変わる。
賃貸マンションだけに、猫の引越しもあるのだろうか。

ちなみに、何年かこのマンションに住んでみてわかったのだが、どうも何匹かがこのマンションの駐車場を縄張りにしているらしく
縄張り争いなのか、時々とんでもない「ふぎゃああああああっ」「にぎゃああああああっ」という猫同士の喧嘩の絶叫が
響き渡ることがある。決まって深夜。猫の決闘というのは深夜に行われているらしい。なんか、ストリートギャング同士の
抗争のようである。

ちなみについ最近、妻が家に子供といる時に自宅に警察がやってきたらしく、
「駐車場で女性の悲鳴が聞こえたとの通報があったので聞き込みに来ました」
と言われたらしい。猫なのでは?というのが平和ボケした私の見立てだったのだが、結局真相は未だに闇の中である。
というか、猫であってほしい。猫であってくれ。

少し歩くと今度はいい感じの「トキワ荘」みたいなアパートがあるのだが、そのアパートの外に面した共用廊下部分も猫スポットである。
ここにはでっぷりと太った、目つきの鋭い茶トラが住み着いている。
いつも決まった位置に「まあ、適当にやってよ…」とでも言いたげな表情でごろんと寝そべるその姿は「ねこちゃん」とは言い難い、
「ねこさん」と言いたくなるものであった。ただ野良猫らしく警戒心は強いので、子供と一緒に行くとこちらに気づくや否やサッと奥まで逃げてしまう。
とはいえ、太っているので本人は全速力のつもりのようだが「ボテボテボテ!」という感じにおなかを揺すって逃げていくさまがまた実にかわいかった。

さらに進むと、今度は買われている猫が放し飼いされているゾーンに出る。
いわゆる「半野良」状態というのだろうか、住処はあるのだが、日中はほとんど外に出ていて帰りたくなったら家に入れてもらう、という非常に贅沢な
猫としては「上がり」の生活をしている連中である。
彼らは人間にも慣れているので、警戒心もそれほどなく、うまくいけば近くまで接近することもできる。
総じて目つきが「本物」とは異なり、くりくりとした丸い瞳を持っており、栄養をたっぷりとっているため、毛並みもツヤツヤである。

ただ、子供たちにとってはあまりそういうことは関係ないらしく、「ねこちゃん」は「ねこちゃん」として、どちらの猫も喜んでいるので、
そのあたりどんな猫にも愛情を持ってくれているようで、猫好きの父としては嬉しく思っている。

半野良の家は2軒ほどあり、もう1軒のおうちはなんと3匹ほどの猫を放し飼いしている。
ここの猫が非常に目つきが鋭く、野良とは異なる鋭さで
「何者だ貴様は」
とでも言いたげな視線でこちらをビシっと見てくるので、私なんかは立ちすくんでしまうほどだ。
子供は全然関係ないという感じで「あー、いっぱいいる!」と走り出しそうになるので、その雰囲気を察しただけで
「解散!」
とばかりに3匹ともシュパッと消える。特殊部隊のようである。

おばあさんが住んでいる古い一軒家の玄関先には、その家に多分飼われているんだとは思うけど、それすら不安になるような
毛並みなんかもボッサボサの年老いた猫が一匹、日のよく当たる場所にいつも目を細めてじっとしていた。
その家に住んでいるおばあさんを見かけたこともあるが、猫とどことなく似ていて、なんだか「相棒」というか、長年連れ添った「伴侶」というか、
とにかく猫と人が一緒に生きている感じがして、とてもよかった。
最近その猫を見かけなくなってしまって、少し寂しい。旅立ってしまったのか、単に高齢だから外に出されなくなっただけなのかわからないが、
あの猫が座っていた場所は、確かに気持ちがよさそうだった。

最近駅へ向かう通勤途中、高架下に新顔の猫を見つけた。
グレーの、まだ少し小さめの猫だった。
少し足を止めて見ていると、こちらをじっと見てくる。まだ人への警戒心はそれほどないのか、まん丸の目が可愛い。
そのままタタタと向こう側へ消えていった。
また猫スポットが増えた。

子供たちと私の猫散歩は、まだ続く。