離席
我々一般の会社員は、通常自分のデスクで仕事をしているけど、時々離席することがある。
理由はもちろんたくさんある。
まずは、会議、打ち合わせ。
仕事中なのだから当たり前だ。仕事は自分のデスクだけで出来るものではない。事件は会議室で起きている。
それから商談。
社外からの来訪者の対応。
これらもマストな用事である。商談室に行くと会社の偉い人と、おそらく旧知の中であろう取引先の偉い人が隅っこでひそひそ話してるのを見かけるけど、本当に大事な話をしてるのか、現役時代の雰囲気を味わいたくて商談プレイしてるのかわからない。
もちろん外出することもあるだろう。
出張、営業、市場調査、現場視察。
言い方はいろいろあるが、事務所を出ないと成立しない仕事は本当に多い。
また、我々企業戦士は時にはアウェイに単身突っ込んでいくことも辞さない。
燃料が片道分しか積間れていないときでも特攻覚悟で挑み玉砕することもあるだろう。
この辺までが僕の思う「仕事」の離席だ。
で、ここからが会社員の「離席」の本番である。
お手洗いに行く。
生理現象である。これはOK。
タバコを吸う。
非喫煙者の人の間では意見が分かれるところだろうが、このあたりもまあOK。
新人が電話を取って、ホワイトボードを見ても何も書いてないのに席にいない場合
「社内にはいるようなんですが、あいにく今離席しておりまして…」
と言わざるを得ないときである。ったく、いろよ、と思う瞬間だ。
僕は新人の頃、この言い回しがわからずパニックになったことがあった。今思うとなんだか社会に慣れてなさすぎて悲壮感すら漂うが、正直に「今行方がわからなくてですね…」などと意味深な言い方をしてしまった。さぞ取引先も心配しただろう。
さらに離席のグレーゾーンに突入していこう。
「病院」
仕方ない面もある。お昼休みは病院も休んでいるところが多い。
結局午前か午後の半休を取らない限り、どこかでこっそり抜け出すしかないのだ。
上司に許可を得て行っている、という人も多いと思う。
歯医者なんかはこのパターンで行かざるを得ない気もする。
「謎の地名プラスNR」
何の仕事で行ってるんだろう、と思わせる地名だけ書かれており、ノーリターンという案件である。
これは本人が「こういう業務で行ってました」と報告すれば証明のしようがない。しかも直帰されれば何時まで仕事していたかも真相は闇の中である。この手を頻繁に使う強者は社内には必ずいるはずである。
「無記入の長期離席」
出ました。離席界のキング。
その行方を誰も知らない。
あれ、トイレかな? いや、タバコでしょ。
ところがもう2時間姿を見ない。社内にもいない。書き忘れではない。
ではどこへ…という失踪パターン。
これを繰り出す人は社内的にもかなり「そういう」人である可能性が高い。
我々は彼らのいないデスクを、ただ見つめることしかできないのだ。
その帰還を待ちながら。