もうだめかもしれない。

大丈夫ですかと聞かれたら、はい大丈夫ですと言うタイプの人間です。

僕らはもうAメロBメロをバースって言ったりサビをフックって言わなくてもいい。

■仕事柄、よく印刷会社の撮影スタジオとかハウススタジオみたいなところで撮影の立会いをすることが多いのだけど、実際の撮影をしている時や準備中というのはやることはなく、むしろ現場的には最も下っ端っぽいアシスタントの男の子よりも邪魔者扱いされている感じがあるので、とにかくカメラマンの機嫌を損ねないように注意深くじっとしているのだが、手持ち無沙汰になることも少なくない。

 

で、そうした撮影スタジオというのは大概空気のように音楽が薄く流されており、これは現場によってもいろいろ異なったりするのだけど、J-WAVEだったり、TOKYO FMだったり、その現場のカメラマンが持ち込んだお気に入りiPodミュージックが流されていたりする。

先日の現場では元ブランキージェットシティのベンジーみたいな風貌のカメラマンがおそらく自分の趣味であろう洋楽セレクションを流しており、洋楽と言ってもそれなりに最近のトレンドっぽい新し目の曲がセレクトされており、どれもいい感じだった。見た目ベンジーだが、流行も抑えている。だけど途中でアシスタントのパンサー菅みたいな奴が間違ってカメラ位置をずらしてしまったらしくブチ切れてました。クライアントがいる前で「クソが!」っと叫んでました。やっぱりベンジーじゃん。グレッチでぶってんじゃん。あとこのカメラマンは間違いなく付き合ってる女を殴ってると思います。

 


そんな撮影現場で流れるいい感じの洋楽をサウンドハウンドっていう音楽聞かせると「これだよ!」って曲名を教えてくれるアプリで調べて検索してあとでこっそりiTunesでダウンロードする、ということを続けている。今もこの文章をそこで見つけた曲を聴きながら書いてます。クリエイティブ~上がる~。

 

 

■俺は中学生の時に椎名林檎Dragon Ashが流行って完全にそこに持っていかれたクチなのであまり大きなことは言えないんだけど、その頃よく聞いてた曲が心に与えた影響はやはりデカイので未だに会社の行き帰りによく聞いている。今日なんかDragon Ashの4枚目のアルバムの隠しトラックだった曲ずっとリピートですよ。琥珀の中に20年前から閉じ込められてる太古の蚊か。俺の遺伝子から20年前の高校生を復元してジュラシックパークに放流してやってくれ。音楽に関しては全くアップデートされないままもうすぐ20年が経とうとしていて、これに関しては俺も引いてるところだからあまり詳しく聞かないでbyかもめんたる

 

で、今日も思ったんだけどやっぱ思い出補正がかかってるから、この先もいいなと思う曲はたくさん出てくるとは思うんだけど、この、何というか感情を揺さぶるような、聞くことで自分の内面を掻き出されるような感覚を与えてくれるような衝撃、衝動というのは無いのだろうなと、確信している。音楽に限らず映画でも絵画でも書物でもいいんだけど、結局自分の心の琴線自体が太く、鈍く、おまけに何重にも得体の知れない脂肪のようなものが周囲にぶよぶよと付きまくって不感症になってしまった以上、あの細く脆い心の琴線が剥き出しだった頃に、暴力的なまでに気持ちを鷲掴みにされたような体験、感覚というのは再現のしようがないのだ。

 


で、その頃の俺がカッコいいと思ってたら曲にm-floのcome againという曲があって、とにかくもうこれはカッコいい、おしゃれ、大人っぽい!と当時高校1年生にして堂々の童貞だった俺はこの曲の中に渋谷とかクラブとかパーティピープルとかそういう偶像を重ねて見ていたわけです。俺は当時服は買えないけど流行りだけでも知っておかないとという健気な焦燥感から、なけなしの小遣いをはたいて近所の商店街の中にあるババアが店番してる水島書店っていう汚ねえ本屋で最新号のsmartって言う今もまだ続いてる宝島社の雑誌を買ってたんだけど、そのsmartにもちゃんとこのcome againのレビュー記事が出ていて、そこに書いてあったレビューが今にして思うとすげえ適当で、多分書いてたライターは邦楽アンチだったんだろうな。文章は「とにかくtakuくんの作るトラックはクールってこと」って締めてあった。そんな超適当なレビューを覚えてるくらい、当時の俺は目に入れるものすべてに一人で勝手に刺激を受けて日々ビンビンに勃ちまくってたわけです。

俺が新しさ、近未来感みたいなものを感じる曲、ってしばりで思いつくのはこのcome againとdaft punkのone more timeとジャミロクワイのVirtual insanityなんだけど、見事に全部20年くらい前の曲で自分の趣味嗜好回路が完全にそこで停止していることを痛感する。あと何よ?ボカロ?

今日久しぶりにcome againのPVをYouTubeで見たんだけど、曲は変わってないけど映像はすげえ古びて見えて、出てくる女の持ってるのはガラケーだしアンテナの伸びるパカパカタイプだったりしたから「ギャグ!?」って思うくらいだった。あとLISAは今の方がむしろ若く見えるな。不思議。verbal は昔から変わらない。というか、よくわからない。

 


当時よく聞いてたのはあといわゆるジャパニーズヒップホップ勢で、中でもkick the can crewは御多分に漏れず聞いてたわけだが、当時彼らの中でも全然有名じゃない「ユートピア」って曲を気に入ってて、部活の後輩の女の子に悩み事の相談メールをもらった時、気合いが入ってたのかこのユートピアって曲の歌詞を引用してクソ長いメール送ったことを思い出しました。殺してくれ。ちなみにその子とその後付き合うようになった、とかいうことは全くありません。KREVA、殺してくれ。