もうだめかもしれない。

大丈夫ですかと聞かれたら、はい大丈夫ですと言うタイプの人間です。

善悪の屑

息子が妹に対して時折暴力的なふるまいを行う。

この間も腕に爪を突き立てて皮膚が捲れてしまい、すこし出血もしたので強い口調で叱った。

すると、全くその場とは関係ない話を息子がし始めたのだ。

僕も時々やられてるけど、と。

妹にではない、学校の友達だと言うのである。

気になったのでしっかりと目を見て話さなければと向き合い、
いつからどんなふうにやられているのか、と問うとむにゃむにゃとあまり要領を得ない。

しつこく聞いても息子も話したくない部分もあるようなので、
とにかく今度から暴力をふるわれたら必ず自分でやめてほしいと言いなさない、それでもやめない場合、
相手はお前に暴力をふるう犯罪者で、それは傷害罪なんだと言う。

どんな理由があっても暴力をふるう人間はクズだ、忘れるな、とはっきりと言う。
俺自身数年前に傷害事件に遭い、示談にいたるまで弁護士を通して気が遠くなるほどながくやりとりをした。見た目は元に戻ってもぜったいに全ては元通りにはならない。気持ちの面では一生戻らない。

証拠がないと言われてしまっては元も子もない。今度から暴力を振るわれたら絶対にメモを取れ、何月何日、どこで誰にどんなことをされたかメモにしろ、と言った。
やめないやつは俺がそいつの父親に文句を言いに行くから絶対に証拠を残せと言った。

子供がどこまで俺の本気を感じたのかわからないが、うやむやにすべきではないと思ったから言った。

被害者になる可能性も、加害者になる可能性も子供にはある。
親になり、自分の人生以外に誰かの人生の責任を負うと言うことをなるべく考えないようにしてきてしまったと俺は思っている。そこまで重く考えなくても、親が考えている以上に子供はたくましいよ、という言葉もきっとあるが、それは親が悩まないようにするための優しさであって、現実にはその間に命懸けの親の苦労と絶え間ない努力が存在していることを俺たちは知っている。