もうだめかもしれない。

大丈夫ですかと聞かれたら、はい大丈夫ですと言うタイプの人間です。

娘の机

先日娘に机を買ってあげた。

四月から小学校に入学するので、ちっこくても自分用の机が必要だろうと思ったのだ。

正直なところ、迷った。

というのも、2歳上の兄のためにニトリで買った学習机は物置と化しており、
彼はこの2年間、学校の宿題だろうが公文だろうが、とにかくその机に向かって30分以上何かをしたことがないからだ。

小学校低学年の子供に、机など不要なのでは?と俺は激しく思うようになっていた。

しかし娘に机を買わなければ、それはそれで「どうしてお兄ちゃんには机があって私にはないの!?」となることは明白。

悩んだ末に、使わなければ自分が引き取って作業台(なんの?)にでもするか、と安い机を楽天で購入した。

とにかく安いことと、狭い子供部屋に置く二台目の机ということもあり、幅と奥行きが小さいことを優先した。このあたりニトリでそこそこでかい学習机を買った兄との差が出てしまい、心優しい父である俺は少々胸を痛めたものである。

その机が、先日到着。
組み立て簡単、とうたわれたその机の、想定以上の部品バラバラ具合に圧倒されながらも苦戦すること1時間。やっと組み上がった机に娘は漫画のように飛び上がって喜んだ。

早速机の上に小物をじゃらじゃらと載せ始め、机の前の壁に自分で書いた絵をポスターのようにペタペタ貼り始める。

しばらくすると、すっかり「娘の城」と化したちっこい机に向かって娘は一生懸命お絵かきをし始めた。

男の子と女の子でこんなに違うのか〜とジェンダー的なアレには敏感でいなければいけない昨今、炎上しそうなことを考えてしまったが、そのことを妻に話すと

「ずっとあちこち行かされてたから、うれしいんだろうね」

と言う。

そうなのだ。
娘はいつもダイニングテーブルで粘土をしては汚いからと怒られてどかされ、
リビングのソファテーブルでスライムを使ってはソファに付くからと怒られ、
お兄ちゃんの机には当然座ることは許されず(つかってないくせに)
最近は自分のベッドの上におもちゃを持ち込んだりしていたのだった。

当たり前のように思っていたが、結構かわいそうなことをしていたんだな、と思った。

家の中で居場所を決められずにうろうろしていた娘にとっては、やっと手に入れた安住の地。
はじめての自分の居場所。
それがこのちっこい机なのである。

小さな小さな机の上を、自分の好きなもので飾り付けている娘を見て、迷ったけど机買ってよかったな、と思った。

と同時に、昨年末強制的にフリーアドレスとなり、今や自分の机すら無い中年となった俺は思わず娘に
「やっぱ、自分の机は大事だよな」
と話しかけてしまいそうだった。