omoide
この間久しぶりに地元のショッピングモールに行ったら、
15周年ということでしたが、
15年で土地の契約が切れるので、取り壊しになるそうです。
で、最後だからじゃあ華々しく盛大にさよならセールとか、
全体を上げて取り組んでるのかなと思いきや
テナントはボコボコ空き始めてがらんとした内装むき出しの店舗がごろごろしてるし
営業中の店も特にやめるからといって平常営業だし
もうすぐ終わるからか催事も子供向けのやけくそみたいなしょぼいのばっかりだし
なんかもう全体的に「終焉」という文字がそこかしこから立ち上っているような
異様な光景でした。
二階の全体を見渡せるスペースに、
よく東京タワーとかにある展望鏡?みたいなものがあったので、
恥ずかしながら「もう今日でここに来るのも最後かもしれない」と覗き込んでみました。
遠くが見えると思うじゃないですか。
すぐそこの光景が上下逆さまに写っていました。
何これ?
ねえ、これ何?
逆さまレンズの入ったトリックカメラみたいな、
なんか大昔の学研の自由研究の本に載ってたみたいな装置が
なぜはっきり落ち目とは言え、不特定多数の人が訪れる、一時はそれなりの集客だってあったであろう娯楽施設のど真ん中に、こんなに目立つ形で置かれてるの?
よくよく見てみると、その装置は奇麗にペイントされてはいますが、外側はなぜかベニヤみたいな木材で作られていましたし、
見る場所を示す矢印もいい感じの手書きでした。
最悪これは近所の人のいい発明おじさんが勝手に置いてった可能性すら否めません。
というかきっとそうなんでしょう。バス停に置いてある善意の椅子みたいなものだと思います。
僕が中学生のときにこの施設は出来たので、
自分自身にとっては青春と言いますか、いろいろと思春期の想い出とともに
歩んできた場所なので、ちょっとばかり郷愁のようなものも感じていたのですが、
この「さかさま望遠鏡」の存在にすっかり
「もう、終わったんや…」
と心地よい諦めがつきました。
その時の心境を強いて言うのならば、きっと名探偵にトリックを全て解き明かされ、
観念して動機をあらかた話し終えた後、警察に両脇を抱えながら出口に向かう途中で振り返り
「探偵さん、僕が怪しいっていつから思ってたんです?」
と聞く時の心境を思い浮かべて頂けますと、ほぼ間違いないかと思います。
爽快感のある諦めでした。
とはいえ、
「ああ、ここにチャリンコで来て本屋で立ち読みするの好きだったなあ」
「ここのミスドでスケジュールン欲しさにドーナッツ買ってくれってせがんだなあ」
と、どうしようもないながらも捨てがたい、奇麗な柄の包装紙みたいな想い出たちを
たくさん僕にくれたのも事実です。
ありがとう、そしてさようなら。
跡地にはマンションが建つそうです。
そのマンションに住み住人たちには、きっとこの地に根付く僕の青春時代の怨念が災いをもたらすことになると思いますので、ぜひ今のうちに手厚い地鎮祭を初めて頂きたいと思います。