もうだめかもしれない。

大丈夫ですかと聞かれたら、はい大丈夫ですと言うタイプの人間です。

電卓

流通業をやっていると、商談の場で取引先に価格の交渉をすることもある。

と書くとなんだかかっこいいが、要は

「ここんとこもう少しなんとかなりませんかねえ〜!??
お願いしますよう〜お願いお願い〜こっちも苦しいんですわ〜!!
下げちくり下げちくり〜!!!!」

ということをもっともらしく言っているだけである。


こういうお願いをすると、たいていの営業マンというのは慣れたもので、何やら使い込んだマイ電卓を取り出して
カチャカチャッと打ち込んで
「ぎりぎり行けて、ここです」
なんて新しい数字を提示してくれる。

あれは、何を打ち込んでいるのだろうか。

この仕事を長くやっている割には本当にお金の流れとか、商取引に関わるあれこれを一切勉強することもなく、
逆に「あえて知らないっていうのも、かっこよくない?」などとうそぶきながら何も吸収せずにひたすら逃げて
なんとなく仕事をしてきた私なので、こういうときに彼ら営業マンが何をあの場で計算しているのかまったくわからないのだ。

とはいえせっかく何かを計算してこちらに少しでも有利な数字を頑張ってくれた彼らに対し
「それ、何計算しているんですか?」
なんて聞くのも逆に「もっと下げられるんじゃないですか〜」という意味に深読みされても怖い。
コンプライアンスの世の中である。

商品の原価云々というよりは、物流費とかのコストをどの程度切り詰められるかとか、そういうものを計算して、
自分のところでどれくらい利益が残るか、というのを計算してらっしゃるのだとは思うのだが
あの場で電卓をカチャカチャ叩いてバシッと出す、というのがかっこいいではないか。

そのうち商談の場で価格の話になったら、もったいぶって電卓で一度適当な計算をして
「うーん…それだとねえ…」
なんて言ってみようかとも思うが、相手に
「こいつ、何を計算してんだ?」
とバレるのも恥ずかしいので、これからも何も勉強しないまま、意識を低く持っていこうと思っている。