もうだめかもしれない。

大丈夫ですかと聞かれたら、はい大丈夫ですと言うタイプの人間です。

あんまり覚えてないや

色々と覚えていない。

悪意はない。
本当に覚えていないのだ。

自分が「覚えておかないといけない」と思うもの以外はそもそも目に入っていないのかわからないが、
とにかく覚えていない。


仕事の面では非常に苦労している。

記憶が欠落していることも多く、怖いのでなんでもメモしている。
すぐにメモがいっぱいになるので付箋に書く。
付箋を重ねて貼る。
しばらくすると付箋が冊子のようになってくる。
付箋を重ねすぎて、途中で付箋を元に戻しているような錯覚に陥るほどだ。

映画化もされた「明日の記憶」という若年性の認知症が始まる男の話があって、
その中に少しでも消えていく記憶を忘れまいとあらゆることを付箋に書いて体中に貼りまくるというシーンがあった。
付箋まみれになってそれでも「記憶を保っている自分」でいようとする切ないシーンなのだが、
僕にとっては他人事ではないように感じた部分だった。

そもそも、仕事って覚えることが多すぎる。
あれ、みんなどうやってるんだろう。記憶力がすごいのか。
やらないといけないことをリストに書き出して、一個ずつ潰していく。
その間にがんがん電話が鳴る。
出る。
話しているうちにやってたことを忘れていく。
話の中で新しくやらなければいけないことが発生することを悟る。
メモする。
時計を見ると打ち合わせの時間になる。
席を立つ。
その時点で最初の仕事のことは忘れてしまう。
以下無限ループである。

書いてて思ったけど、よくやってこれたな自分、と思う。

それと電話だ。
電話は突然かかってくる。
以前飲み会の席で「電話って突然かかってくるじゃないですか」と話をしたらぽかんとされた。
そりゃそうだ。そういうものだ。というか、電話じゃなくても話しかけるのにしても突然ではない声かけなど存在しない。
わかっている。
わかっているが、僕にとって電話は突然かかってくるものなのだ。気分的に。
なんでここで!こんなときに鳴るなよ!そういう存在だ。
鳴る前に「今から電話鳴りますけど、どうします?出ます?」みたいな機能をつけておいてほしい。
とはいえ取次を断る間もなくすぐに相手が出てしまうので、基本的にはほぼ出る。

客観的に見て大事だと思われることを大胆に忘れ去っていく日常の中で、
本当にどうでもいいことをいつまでも覚えていたりする。
「そういえば昔見てた海外ドラマの「冒険野郎マクガイバー」ってDVDになってないかな?」
Amazonで探したらDVDになってて嬉しかった。マクガイバーがコンビニで買い物してるときに強盗が入ってきて、
丸腰だったから店内にあるものを作って爆弾を作って強盗を驚かせて捕まえるシーンがあったことも覚えている。
そのときゴム製の水まくらに材料を詰めていたことも覚えている。異常な詳細加減だ。
そんなことばかりである。マクガイバーは確かに面白かったが、僕の人生を救ってはくれない。

僕の脳の構造は設定がバグっている。
一度開いて軽く配線みたいなところを繋ぎ直したらもっと生きやすくなるんじゃないかと思っているのだが
なんでもかんでも覚えているのもそれはそれで怖い。

だって忘れたいことだってたくさんあるのだ。
そういう意味では、僕は忘れたいことは忘れられないでいつまでも覚えている。

恥ずかしかった、悔しかった、腹が立った。
とかそんなマイナスな感情ばかり蓄積させて無限に膨張しているような気もする。
だから夜中に風呂場で「うわーっ」とか叫んだりする。歯を磨きながら身悶える。布団に入るときに息を殺して悲鳴をあげる。
そんな毎日で僕はもう疲れている。疲れるはずである。嫌なことはすっかり全部忘れて毎朝健やかに起きてハツラツと日々を過ごしたい。

つまるところ、自分に興味があることしか覚える気がないのだ。
僕が忘れていることは自分には必要のないことなのだと割り切ろう。
仕事は僕には関係のないことなのだ。なんのために仕事をしているのかと問われたら、なぜ歌うのかと問われたロックシンガーみたいに「金のためだよ」と答えよう。
ただ、歌詞を頻繁に忘れてしまうロックシンガーではあるけれど。