もうだめかもしれない。

大丈夫ですかと聞かれたら、はい大丈夫ですと言うタイプの人間です。

妻と二人で出かけた

母親から
「たまには夫婦二人で出かけてきたら。子供預かるから」
という申し出を受け、少し不安はありつつも、ありがたく甘えさせてもらうことにした。
今まで何度も実家には子供達を連れて行ってはいるものの、子供達だけを預けるということはしたことがなかったからだ。長男はまだしも、2歳の娘はどうかな…と思っていたが、いざ連れて行ったら僕たちのことは玄関に入るや否や眼中にないようで、靴を脱ぐなり奥の部屋までダッシュで「ねんどやろー!」と走り去っていった。普段我が家では出来ないことがおばあちゃんの家では出来る、ということをよく知っているため、子供達も全力で遊ぶモードになってくれたようだ。

「夕飯食べてからもどってくれればいいから」
というありがたい言葉をもらい、お礼を言いつつ外に出たものの、僕らは結局当日まで「どうやって過ごすか」というところを詰めきれないままでいた。
当初はせっかくだからディズニーランドにでも…なんて話もしていたのだが、混雑状況をネットなどで見て気が引けて、結局近場に映画を見に行くことにした。

次の回までまだ少し時間があったので、食事を先に済ませようと、レストランに入る。
普段だと子供 を連れては少し入りにくい雰囲気のお店なので、久しぶりに入ったなという感覚だった。
食事をするときに、妻と二人でゆっくりとナイフとフォークで食べる、というのも久しぶりだった。普段は使うにしてもまずはいそいそと子供の食べたがる分を切り分けたり、後半飽きた娘が歩き出す前に食べ終えなくてはと味は二の次で口に押し込んだり、そもそも食べるのに時間がかかったり食べにくいメニューやお店は選ばなかったりするので、なんだか変な感じだった。
妻とも二人で「静かだね」と言ってしまったくらいだ。
子供がいないと、必然的に会話は二人のものになる。
二人だけでお昼時から食事をしながら話をする機会は本当に久しぶりで、昔はずっとこうだったんだよなあと感慨深かった。

外を歩いていると、子供連れが目につく。
妻と二人で歩くときの距離感も少し最初はぎこちなくなってしまった。
一つ気がついたことが歩くスピードで、僕もそんなに歩くのは早い方ではないのだけど、どうも妻の歩くスピードでが遅くて、どうしたのかなと思っていたらしばらくして
「だめだ。全然早足で歩けない。多分普段子供のスピードに合わせてるから、その速度になってる」
と言った。

食事を終えて、映画を見たあとに買い物をした。
妻は服を見たい、と言ったので一緒に行ったが、結局自分のものはあまり見ずに、そのあとすぐに子供服を見に行った。
僕も途中のキッズスペースを見て、ここなら遊ばせられるな、と思っていた。
視点がいつの間にか子供を中心に考えるようになっていて、普段は子供のことばっかり考えなきゃいけなくて嫌だな、自分の時間が欲しいな、とか思っているのに、こんな風に考えてしまうものなんだなと思った。

途中で様子を伺うために二度ほど実家に電話をかけた。
問題はないか、と聞くと何かあったらとっくに連絡している、と言われて気が抜けた。「ちょっと待って」と母親が言い、物音がしたかと思うと「ぱぱー?」と長男の声が聞こえてきた。「今日デートしてるの?」とか「楽しい?」とか、ジジババに色々吹き込まれているのか色々と聞いてくる。ちょっと前まで電話になると会話がうまくできなかったのに、だいぶ話せるようになったな、と思っていたら「じゃあばいばい」と言われて今度は長女の声で「もしもしもしもしもしもしー!」と絶叫が聞こえてきた。こっちはもう少し時間がかかるな、と思った。

両親にお礼の気持ちを込めてお土産を買って帰り、もしかして寝てしまってないだろうかと心配しながら帰ると、元気な様子の子供たちと、平然を装っているものの顔に疲労の色を浮かべた両親が出迎えてくれたので、「本当に今日はありがとう」と両親に感謝した。せっかくの休みにゆっくりしたいだろうに、うるさい孫たちを預かると申し出てくれたおかげで、久しぶりに妻と二人で出かける時間が作れた。

帰り道、子供たちは興奮した様子で喋っていて、おじいちゃんおばあちゃんと過ごした一日が相当楽しかった様子だったので、安心した。
子供たちが大きくなって「二人で出かけてくれば」と言い出すようになってから、また妻とこうした時間を過ごすことも多くなるのだろう。
それまでは、時々嫌になりながらも、家族四人で過ごせる時間を過ごしていく。