もうだめかもしれない。

大丈夫ですかと聞かれたら、はい大丈夫ですと言うタイプの人間です。

そうだね、君は一生女子だからね。

電車は今日も個人情報を自分から垂れ流す無邪気で無防備な人々が溢れていて俺に色々なものを見せてくれる。朝から風俗情報を熱心に読み込む豪傑サラリーマンにはむしろ尊敬の念を抱いてしまったし冴えない小柄な薄毛のおっさんがGUCCIの財布をメルカリで真剣に探しているのを見た時はそのプレゼント先に想いを馳せたし韓国アイドルみたいな化粧をした若い女が内容など一切見ずにインスタの投稿に端から端までいいねを押していく様子にSNSでバズるとか炎上するとか実は誰も気にしてねえんじゃねえかと思ったりした。「黒人の指って太いから手マン超気持ちいいんだよ」と言っていた女は今頃いつか行きたいと言っていたワーキングホリデーに行けただろうか。あの女も見事なオルチャンメイクだった。世界中の男とセックスでもして世界制覇を達成している頃だろうか。そういえば昔テレビでリリー・フランキーが「もっとみんな世界中の人と仲良くした方がいい。例えば、世界中の巨乳と付き合うとか」と言っていて、俺はこの人天才だな、と思った。ラブ&エロス。きっとそうなれば本当に世界は一つになるに違いない。人類皆兄弟って、そういう意味?目の前を右脚をギプスでグルグル巻きにした制服姿の女子中学生が器用に松葉杖を使いこなして普通に歩く俺より早く追い抜いていき、紫陽花の前で立ち止まって覗き込んだ。母親らしき女性が少し先から声を掛けると笑顔で顔を上げてまたひょこひょこと松葉杖で歩き出す。今日も俺はこんな子が少しでも生きていることが楽しいと思える世界であればいいと思う。