もうだめかもしれない。

大丈夫ですかと聞かれたら、はい大丈夫ですと言うタイプの人間です。

ヒーラー

血液検査の結果、肝臓にも腎臓にも膵臓にも胃腸は見当たらず、わかったことは俺は内臓は健康だということだった。そんなわけない。眠る時右半身を下にして眠ろうとして感じるあの重い違和感はなんだ。日中感じるあの鈍痛はなんだ。俺の体の中で確実に何かが起きている。蛭子能収そっくりの医者は「あとは様子を見てみて、胃カメラやるかどうかですね。私が見ます。胃カメラやりましょう」と言われ結局俺は胃カメラをやることになった。「口から入れるとオエってなっちゃうんで」というと「鼻から入れましょう」と即答。鮮やかな切り返し。本家の蛭子にこの医者の爪の垢を飲ませたい。見たか蛭子。太川陽介にもこうやって切り返せるかお前は蛭子。仕事でハウススタジオに行ったときのこと。あまりにもずっと俺が背中を親指で押しながら神妙な顔をしていたため気を使って制作のスタッフが体調を聞いてきた。申し訳ないと思いつつ「実は背中とみぞおちが痛くて…」と吐露すると「わたしヒーリングできるんですよ」と妙齢デザイナーの女性が言い出したとき、おっ、これはやべえなと思いつつ「ホントですか!じゃあちょっとこのあたり見てもらえませんか」と切り返した俺が蛭子顔医師並みに鮮やかに場の空気を切り返したと自負している。あのときの現場の空気感、俺がああでも言わなきゃ絶望的になってた。「うしろ向いてください」と言われるがままに従う。後ろでデザイナー女性は何かをしているらしい。なんだ。何を俺はされてるんだ。「あー腰のあたりがね、やっぱり」などと聞こえて来るが一向に痛みは収まらない。そりゃそうだろ。「今ね、ちょっと気を送ってるんですけど、どうですか」どうもうこうもねえだろ。いてえよ。「あ、やっぱりなんか違う!ちょっと痛いのが引いてきた気がする」うそー、と声をあげる周囲のスタッフ陣。なんだこれ。なんでこいつのヒーリング技術を俺が保証してやんきゃいけないんだよ。耐えかねて振り返るとデザイナー女性は一生懸命広げた手のひらを上下にゆっくり上げ下げしながら「ハンドパワー送ってます」みたいな顔してた。お前が医者行け。