もうだめかもしれない。

大丈夫ですかと聞かれたら、はい大丈夫ですと言うタイプの人間です。

小説

小説の公募に狂ったように応募し続けていた時期がある。ちょっとした賞が少し選考を進んだり、小さな賞を取って少額の賞金がもらえたり、結果を見ながら一喜一憂していたあの頃はとても楽しくて、今でも時々思い出すことがある。結局たいした結果も出せないまま、その挑戦は1年足らずで終わったが、もしかしたら、あれが俺が自分の人生の中で「何者か」になろうとしていた、最後だったのかなと思うこともある。今俺は今できること、目の前にあるものを右から左へ流すだけで精一杯で、それ以上のことに手が出せない状況になりつつあるが、今後のキャリアや家庭環境の変化を逆算して考えてみれば、そうした状況がますます強くなることは考えるまでもないことで、このままがずっと続くのか、と果てしない気分になる。それは諦観とも少し違っていて、絶望でもなく、虚無というほどでもない。茫洋とした、寂しさと、畏怖が入り混じった、どこまでも先の見えない空間に浮いているような心もとない気分だ。その頃に自分が書いた小説を読み返すと、主人公たちは皆人生に飽き飽きしていて、生きづらそうに人生の端っこを歩いている。今の俺がもし何かを書き出したら、その物語の主人公は、どんな気分なのだろうか。彼もまた、俺と同じような、心もとない気分で、想像主である俺を見上げるのだろうか。