もうだめかもしれない。

大丈夫ですかと聞かれたら、はい大丈夫ですと言うタイプの人間です。

お前だよ、犯罪者

俺は数年前傷害事件に巻き込まれて身体に障害が残った。加害者は仕事絡みの知人で賠償責任などの交渉も拗れたりなんやかんやと長引いてしまい結局俺がもうどうでもいいという気持ちで強引に幕引きを図った。恐らく相場よりも大幅に安い額で手打ちしたと思う。家族にも言えず同僚にも言えず一人で弁護士と話し合う毎日に俺の心は少しづつ死んでいった。加害者は今ものうのうと暮らしており恐らく俺を傷付けたことも忘れているに違いない。被害届を出せばよかったのか。裁判を起こせばよかったのか。夜眠る前に何度も何度も何度も考えた。考えても答えは出なかった。何度も病院に通い完治の可能性は無いと言われセカンドオピニオンを受けた。果てしなくひたすら続くリハビリを受けるために評判の高い医者を探して遠くまで通った。老人達に混じり繰り返すトレーニングと積み重なる交通費と治療費。あの頃通った駅前の風景やバスから見た流れる町。絶望に続いていると本気で感じた。あの時から俺の心の一部は死んでしまったままで毎日続くリハビリの度に俺は奥歯を噛み締めている。いざという時、誰も守ってくれない。誰も心には寄り添ってくれない。俺の呪いの声がいつかあの犯罪者に届き奴が苦しみ地獄の底へ落ちるまで続く。犯罪被害者の苦しみは日常を平和にしか暮らしたことの無い人間には想像がつかない。今もこの世界のどこかには蹂躙され尊厳を奪われ苦しみ悲しんでいる人間がいる。命が残っても彼等に今までと同じ生活は二度と戻って来ない。彼等の生活はこれからも死ぬまで加害者によって奪われ続ける。今日も悲惨な犯罪のニュースが流れる。数秒数分の中で数十年生きた人間達の一生が簡単に奪われたことが語られる。後には何も残らない。誰も知らない。彼等の人生は忘れられていく。犯罪者はどこにでもいる。奴等は平然と平凡な人間のふりをして潜む。だから貴方達に言う。逃げて欲しい。犯罪者から。貴方の日常を奪う悪魔から。私達の日常を守るために。