もうだめかもしれない。

大丈夫ですかと聞かれたら、はい大丈夫ですと言うタイプの人間です。

人生ホンマ一度きりですからね

仕事でお世話になっている人と雑談している中不意に

「もう大丈夫なんで言うんですけど、僕この間ガンになっちゃって」

と言われ、純度100%混じりっけなしの上物の「えっ」が出ました。

ほぼ同世代の人なので、なんとなく盲目的に元気で健康、と思っていたし
俺以上に体を鍛えていて、なんなら家にトレーニングルーム作っちゃうような人なので
その頑健そうな見た目と「ガン」というキーワードがすぐに結びつかなかった。

ただ、もちろんどれだけ鍛えたところで内臓は鍛えられないし、気分だけいつまで若くても
俺たちはすでに中年と呼ばれる世代に入りつつある。
なんら不思議な話ではなかった。
そして、この感覚は俺が「病気はまだまだ遠い未来のこと」と思い込みに囚われていることを浮き彫りにした。

「ちょっと気になってしっかり人間ドックやって、おかしいねってなって精密検査したら即手術しましょうって流れでした。いやあ、早めに見つかってよかったですよ」

と元気そうに語ったが

「でもね、やっぱり告知されると同時に、ホント嘘みたいに子供の顔が頭に浮かびましたね」

俺も彼もほぼ同じくらいの子供を持つ父親同士。彼はバツイチで子供は奥さんが引き取り育てているが、子供との仲は良好で、月一の子供と会う日は絶対に仕事を入れずにお姫様扱いしているという話を定期的に聞いている。

いつ自分が死んでしまうか、わからないからな。
そう思うと、ああ、手をつけないまま見ないことにしているディアゴスティーニムーミンハウスをつくる全100巻どうしようとか、いろいろなことが頭に浮かぶ。

別の取引先の社長は「人生ホンマ一度きりですからね」と言っては不倫しまくっており、世の中いろいろな人がいるなあ、と思っていたがなんとなく彼の言うこともわからないでもない。

とりあえず、酒の量減らして運動ちゃんとやろ、と思った。