もうだめかもしれない。

大丈夫ですかと聞かれたら、はい大丈夫ですと言うタイプの人間です。

サボり日記 1日目

有給を取ってこれを書いている。

ここは浅草のドーミーイン。
初めてのサウナに入って俺は今多幸感に包まれている。

朝 精神科に行く。
ここ最近気分は安定していること、有給を取って映画でも見に行こうと思っていることを話す。

すると映画について食いついてくる。
どんな映画を見るか、ということは影響してくるらしい。
好きな映画を問われ思いつかず、「バックトゥザフューチャーとか好きです」というと
「あれは名作ですよね」と思わぬ賛同をもらい動揺してしまう。

そのまま銀座へ。
今日は銀座にあるシネスイッチという映画館で映画を観る予定なので、
銀座でランチを食べるつもりなのだ。

ところが食べようと思っていた「数寄屋バーグ」が定休日。
ネットで調べたら情報が古くて年中無休となっている。
コロナ以降変わったのだろう。

仕方ないので少し歩いて「石松亭」へ。
出版関係っぽい業界人が大将と昼間から常連トークしているところへ果敢に飛び込む俺。
海鮮丼を頼んで黙々と平らげて出る。

思ったより早く食べ終わってしまったので映画まで2時間以上暇になってしまった。
銀座などわからないので、とりあえず本屋を見ようと思い立ち調べると
GINZA SIXの中に蔦屋書店があることがわかったので移動。

GINZA SIXの圧倒的な「田舎者と貧乏人は入ってくんな」感。
入り口からして普通のショッピングモールみたいな透明ガラスの自動ドアではなく、中が見えないキンキラのフィルムみたいの貼ってありました。マジックミラー号じゃないんだから。

気にせず突撃。
店内中いい匂い。なんか高そうなものが置いてある、ということだけわかる。
高そうなものを尻目にひたすらエスカレーターを上る。
天井から雲のようなもくもくした形のモニュメントが吊るされていてかわいかった。

蔦屋書店について愕然とする。
ほとんどが建築かアート、デザイン関連の書籍。
うわー守備範囲外〜と思いつつも見ていくと興味が持てそうな本が結構あって面白くなり、
手に取ったり眺めたりするだけでなんやかんや1時間ほど時間を潰すことに成功。
なんかやっぱりリアル書店はこういうのがいいな。ネットではこうはいかない。
あと何より、自分がその場にいることでまるでセンスが良くなった様な気がして気持ちいいね。
他にいるお客さんたちみんなセンスがよさそうな服着たかっこいい人ばっかだったから、自分も
「俺、デザイン関係の、アレだから」
みたいな顔で本をパラパラとめくっていた。

そのあと地下2階にブルーボトルコーヒーがあることを知り、移動。
ホワイトとブルーを基調に統一されたおしゃれな店内。
カフェラテを頼むとカップ一杯になみなみと注がれたものをカウンターで渡され、ギャグみたいにそろそろと席まで運んだ。
向かいには金髪の白人女性二人組がベビーカーで赤ちゃんを連れてきて談笑。
俺の横には仕事をリタイアし、今は毎日悠々自適ですよ、と全身で語っている高そうな服装の夫婦らしき中年カップル。ああ、平日昼間の銀座には、こういう層が確実に存在している。俺がどれくらいぶりかに取ったなけなしの有給で得る体験が、この人たちには日常なのだ。

ちょっと苦めのカフェラテを飲みながら武田砂鉄の「コンプレックス文化論」を読む。
映画の時間が近づいてきたので移動。

シネスイッチ銀座で見たかったのは、ドランクドラゴン塚地武雅加賀まりこの「梅切らぬバカ」という映画。何十年も役の人生を重ねてきたように感じる演技。お二人ともさすがだなあと思った。
お話の方は90分くらいなので最後がちょっと急に終わった気はしたけど、全体的に見終わったあとは爽やかな気持ちになる映画。

映画館を出るともう15時半を過ぎていた。
悩んだが、一か八かで本日の宿である浅草に先に移動することにした。

行きたいお店が浅草に一箇所あり、そこに翌日行くとスケジュール的にちょっと厳しいと感じたのだ。

ホットケーキが有名な「ミモザ」という喫茶店

調べると、駅からめっちゃ歩く。
17時に店が閉まる。16時半にラストオーダー。
浅草駅に着いた時点でもう16時5分だった。
Googleマップ上で普通に歩いても15分かかるとある。
少しでも迷ったら終わりだ。
日が落ち始め薄暗い浅草の街を汗だくになって歩き回る俺。
駅を離れ、普通の住宅街に突入し、くねくね入り組んだ細い路地裏をいくつか曲がると、果たしてそれはあった。
すっかり暗くなってしまった路地裏で煌々と明るく灯るお店。
よかった。

閉店間際だというのに店内は8割型埋まっている。
カウンターに通されすぐに5段重ねのビッグホットケーキを頼もう、と思ったのだが
もうすぐ夕飯の時間なのに?とひよってしまい、普通のホットケーキに変更。情けない。
まもなく到着したホットケーキを食べながら、2段重ねにしたのは賢明だった、と思った。
あとでインスタを見ると若い女性も普通に5段重ねを食べていたりして尊敬してしまった。
みんなすごいよ。2枚でも相当お腹にたまったよ。

ホットケーキを食べて出ると、もう真っ暗。
すぐに夕飯を食べる気分にもならず、とりあえず先にチェックインすることにした。

部屋に入ってテレビをつけてベッドにとりあえず横になる。
スマホを開くと今日1日で15000歩歩いていた。そりゃ疲れるわ。

2時間ほど部屋で休み、19時過ぎにむくりと起き上がる。
腹は少しこなれてきていそうだ。
夕飯はもう近くで済まそう。
ホテルのすぐ近くにある「ぼたん」という町中華に行くことにした。
軽い気持ちで行ったのだが、人気のお店らしく、平日の19時過ぎにもかかわらずほぼ満員。
待たずに入れてよかった。予約のお客さんもあとからどんどん入ってくるしひっきりなしに注文が入る。
ホットケーキを食べてまだそれほど時間がたっていないののに目の前の厨房と、店内全体から発せられるお客さんたちの食欲に刺激を受けて半チャーハンとラーメンのセットに加え、餃子まで頼んでしまう。
特段目立ったところもないけど、孤独のグルメみたいに「そうそう、こういうのでいいんだよこういうので」とでも言いたくなるツボを押さえたラーメンとチャーハン。餃子はちょっと味が薄いきもしたけど、川の焼き具合をサイズ感がちょうどよくてあっという間に平らげてしまう。

腹ごなしに散歩。
バンダイ本社前に行き、下からライトアップされた不気味なアンパンマンドラえもんシナモロールの写真を撮って妻に送信。

駒形橋の上でスカイツリーアサヒビール本社ビルの金色のうんこを背後に自撮り。
LINEの返事には「留学生の方ですか?日本観光に来たんですか?」の文字。

ホテルに戻り、お待ちかねの風呂へ。
大阪に出張に行く時もドーミーインを取れる時は取っていた。
やはり部屋のユニットバスでシャワーを浴びるのと、人工でも大浴場で風呂に入るのとでは何かが決定的に違う。 

サウナ×水風呂を3セット。
作法を守らないと「通」の方に舌打ちでもされかねない、と
うつ病な上に臆病な俺はちゃんとネットで
「サウナ 初心者 入り方」と検索した。
サウナに6分、水風呂2分からまずは始めるのがよろしい、とあったので
その通りに実践。

水風呂に初めて肩まで入ったときは嘘だろ2分も入ってらんねえぞ、
と思ったが、不思議とチリチリと体の外側から炭酸が弾ける様な、
鳥肌が立つ様な感覚がしたかと思うと体の内側からじんわりと温まっていく様な感覚に。
繰り返すごとに体の温まり方が加速していくあの感じ。
3回目にはうなじのあたりのじんわり加減が熱を持ったようにかっかとしてきてなんとも気持ちがいい。

交互にサウナと水風呂を繰り返していくことで「ととのう」という状態になるという。
チェックインの際にホテルのフロントのお姉さんに渡された簡単な案内にも「ととのう」という言葉が書かれている。

正直なところ初体験だしトータルの時間も短いので「ととの」ったかどうかはわからない。
でも、生きてきて初めて味わう感覚だったのは確かだ。これは面白い。面白いし、気持ちいい。
サウナーと呼ばれる人たちがいるのもわかる。おじさんはサウナにはまるのもわかる。
なんだかちょっとした体調不良や疲労感というものはサウナと水風呂を繰り返すと心持ち軽くなる様な気もする。

サウナを出てから露天に移る。
平日ということもありもともと人も少ないせいか、露天には誰もいない。
12月の空気は体にしんしんと染みいる様に寒いが、湯船に入ると顔の部分に当たる空気がむしろ心地いい。
誰もいない空間で足を伸ばして壁側に体を預けて目を閉じる。
スピーカーから小さくリラクゼーション音楽が流れている。
うっすらと目を開けると遠くにクリスマスツリーみたいに光るスカイツリー
このまま寝たら気持ちいいだろうなと思う。

お風呂を出るとお風呂上がりのサービスとしてアイスを1本もらえるという。
俺の前に出たおじさんがごそごそとボックスを漁ってアイスキャンデーを選んでいた。
おじさんってこういうサービスなんてバカにして持ち帰らないのかと思ったらすごい嬉しそうだった。
俺もハーシーズのチョコが挟まっているアイスモナカをしっかりもらった。

23時まで提供している夜鳴きそばもしっかり食べる。
入るとお姉さんが1回ずつ麺を茹でて作ってくれる。なんだか申し訳ない。セルフかと思っていた。

抗うつ剤服用中は酒を飲んではいけないので、
コンビニで買い込んだオールフリーで一人で乾杯。